「ヌック」という言葉をご存じでしょうか。最近、海外のインテリア雑誌やSNSで耳にする機会が増えてきた、注目ワードです。
ヌックは“nook”と書き、英語で「隅っこ」や「奥まった場所」を意味する言葉です。インテリアにおいては、家の中にあえて小さな居場所を設けることで、暮らしにくつろぎや遊び心を添えるスタイルを指しています。
例えば、階段下に小さな本棚とベンチを組み合わせた読書コーナー。窓辺に腰かけられるベンチを設けて、光を浴びながらお茶を楽しめる場所。リビングの一角に小上がりを設けて、家族と同じ空間にいながら自分の時間を過ごせる場所。
そうした、暮らしの中のちょっとした“隅っこ”が、ヌックです。
思い返してみてください。
子どものころ、押入れや机の下に潜り込んで、秘密基地をつくった経験はありませんか? 狭い空間にお気に入りのものを持ち込んで過ごすと、不思議と落ち着いたりワクワクしたりしたのではないでしょうか。
あるいは今でも、カフェやレストランで席を選ぶときに、広い真ん中のテーブルよりも壁際や隅の席に惹かれることはありませんか。
人は本能的に、背中を預けることができるような、少し囲まれた小さな空間に安心感を覚えるものです。ヌックは、その「秘密基地のような感覚」を大人の暮らしに取り込む工夫ともいえます。他者の気配を感じながら「ちょっとこもれる」ことで、暮らしにいっそうの安らぎと、奥行きを与えてくれるのです。
もちろん、ヌックは単なる「こもり場」ではありません。
空間の一部を切り取ってつくるからこそ、お部屋のインテリアに変化をもたらす効果があります。
例えば、リビングの片隅にベンチシートを組み込むだけで部屋の印象が変わりますし、廊下の突き当たりに小さなヌックを設ければ、ただの通路が家の中の特別な居場所へと生まれ変わります。
心理的に安心できるのと同時に、視覚的にも空間を彩る存在。それがヌックです。リラックスできるだけの場所ではなく、デザイン的なアクセントとして、空間を魅力的に演出する要素でもあるのです。
欧米の家に作られていた暖炉のそばに小さなベンチを設けてくつろぐスペースが、ヌックの原型とも言われています。一方、遠く離れた日本の住まいにも、似たような文化がありました。
縁側でひなたぼっこをするひととき、掘りごたつで家族が集まる時間、小さな書斎や和室にこもって過ごす日。広々した空間では得られない、ほどよい「囲われ感」を楽しむ文化は、私たちの暮らしの中にも息づいています。
現代の家づくりでは、開放感のある大空間リビングなどに注目が集まりがちですが、近年ではあえて「こぢんまりとした隅っこ」を設けることで生まれる、安心して一息つける小さな空間を求める空気も生まれています。
リビングの一角にヌックがあれば、家族の気配を感じながらも自分の時間を楽しむことができますし、階段下や廊下の先にヌックを設ければ、住まい全体の雰囲気がより豊かになるでしょう。
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